給付金の所得制限は公平なのか。

おカネのはなし

ご無沙汰しております。たこぱぱです。

10月の選挙以来、給付金、特に所得制限がメディアを賑わせています。
個人的には所得制限の考え方自体は賛成なのですが、今回の給付金に限らず、なんでもかんでも所得制限が設けられている現状には疑問があります。
自分の頭の整理も兼ねて、考えてみようと思います。

1.逆転現象
所得制限のラインを境にして、給付が受けられる人たちと給付が受けられない人たちで、総収入(という表現が正しいかわかりませんが)に逆転現象が生じてしまいます。
児童手当の場合、所得660万円を境にして年間18万円から年間6万円に減額になります。(3歳未満の児童1人の場合)
所得559万円の人は18万円受け取れ、所得560万円の人は6万円しか受け取れません。
所得+給付の額としては、所得559万円の人の方が所得560万円の人よりも12万円も多く給付を受け取れるのです。しかも給付金は非課税ですから、収入に換算してみれば年間17万円(月1.7万円)くらい差が出るわけです(17万円に対して所得税20%、住民税10%を引いた残りが12万円。実際にはさらに社会保険料も引かれます)。

2.逆転現象はなぜよくない?
同じ製造ラインで同じ仕事をしていて、150時間働いた自分より、130時間しか働いていない隣の人の方が給料がいいなんてたまらないですよね。それなら自分も130時間でいいやって思いますよね。
当たり前ですが、逆転現象により仕事に向き合う意欲がそがれてしまいます。
製造ラインの例は極端な例ですが、何もしなくてお金が降ってくるわけじゃありません。精神的にも肉体的にもきつい思いをしながら稼いでいるわけです。「所得がたくさんあるからちょっと我慢してよ」まではいいとしても、所得が低い人の方がむしろ豊かな生活ができるというのは、さすがに不公平ではないでしょうか。所得税扶養の103万円の壁しかり、社会保険の130万円の壁しかり、生活保護しかり、頑張った人が割を食いやすい世の中になってやしないかと思うのです。

3.逆転解消のお手本は所得税制
所得がある人ほど負担が大きくなる所得税の累進課税制度は皆さんご存じだと思います。
たとえば、所得が330万円未満の人は10%、330万円以上の人は20%の税率が適用されます。
でも、所得329万円の人が所得330万円の人よりも収入から所得税を引いた額が大きくなることはありません。
次の表は所得税の速算表になります。


この中の「控除額」がポイントになっています。
195万円~329.9万円のところで控除額は97,500円となっていますが、これはこの区分の開始額195万円に前の区分の税率5%をかけたものです。
つまり、10%の税率をかけるのは、195万円以上の部分だけとなっています。
次の区分も同様です。
こうした制度設計がされているので、所得税率が33%に変わる前に所得を抑えておこうなんてことにはならないのです。

4.今回の給付を考える
今回の給付を考えたとき、課税所得として給付するというのも1つの案だと思います。
給付金も給与と同じように源泉徴収して支給するわけです。収入の高い家庭ほど実質的な支給額は下がります。ですが、手当によって総収入が逆転することはありません。実務上は乙欄適用(※)で先に一定額を徴収しておいて、多くの人は確定申告で還付を受ける形になるでしょうか。

 ※乙欄とは
 メインの勤務先以外から給与を受け取る際に適用される源泉徴収時の税額。
 「源泉徴収税額表」の「乙蘭」に記載されている金額を適用する。
 一般的に通常の源泉税率よりも高めに設定されているが、確定申告により本来の税額との差分が還付。
  国税庁:令和3年分 源泉徴収税額表
  https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2020/02.htm

確定申告が面倒だという意見も多いと思いますが、面倒だと思う人は確定申告せずに(所得水準にもよりますが)ラクする代わりに多くの所得税を支払えばいいだけです。多くの人が確定申告をするようになれば、今回のコロナで露呈した、本当に困っている家庭がどこにあるのかわからないといった状況も改善するはずです。
税務署の負担が増えるという議論もあるでしょう。でも、確定申告を電子申告してもらえれば、税務署の負担は特に増えないはずです。

5.余談ですが
仕事で給与計算を行っていたので、本当に収入が多い人たちが所得税だ、住民税だ、社会保険だと根こそぎ持っていかれて手元に残らない状況を間近で見ていました。
企業から、そして金持ちからはどれだけ税金をとっても構わないといった論調にある気がしますが、そうなると、彼らは日本から逃げていきます。
ある意味で日本にとっての優良顧客である彼らにとって、納得性のある制度設計をしてもらいたいと思います。また、他の国民だっていろいろと考えています。給付金も単なる「バラマキ」と感じてしまえば、その恩恵よりも将来への不安の方が勝ります。そうなると受け取った給付金以上を使うよりも、備えとしての貯蓄に回さないといけない意識が強くなってしまうんではないでしょうか。

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